受賞者

平成30年度<風戸賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:「超微形態学を用いた新規オートファジーの発見」

東京医科歯科大学 難治疾患研究所 講師
荒川 聡子

荒川聡子氏は、新規オートファジー経路を見いだす上で、電子顕微鏡を有効に活用して決定的な役割を果たすとともに、超微形態学的にその機構を解析しました。

オートファジーは、細胞内の不要な蛋白質や細胞小器官を分解するシステムで、酵母からほ乳類まで真核細胞に広くみられ、細胞の機能維持に重要な役割を担っています。従来は遺伝学的解析により、Atg5やAtg7がオートファジーに必須とされていました。この様な中で、荒川氏はAtg5ないしはAtg7を欠損したほ乳類細胞を電子顕微鏡で観察し、これらの細胞でもオートファジーが起こることを見いだしました。この新たなオートファジーの機構を、超薄切片法に加えて、共焦点顕微鏡観察細胞の同一部位の電顕観察(CLEM法)や、凍結置換法、凍結割断レプリカ法、標識レプリカ法などの多彩な電顕技法により、精緻に解析を推し進めました。この新規オートファジー経路は、胎仔期における赤血球への分化におけるミトコンドリア除去に関与するなど、様々な局面で見られることを明らかにしました。酵母やほ乳類細胞においては、ミトコンドリアや分泌顆粒の分解に関わるオートファゴゾームの隔離膜が、ゴルジ装置のトランス側膜から形成されるのを見いだしました。この経路は、ゴルジ装置の膜が関与する分解ということで、GOMED(Golgi membrane-associated degradation)と命名されました。

荒川氏によるこれらの研究成果は、オートファジー研究の新たな局面を拓くものと国内外で高く評価されています。さらに細胞内部の構造や動態を解析する上での電子顕微鏡の有効性を示すものといえ、今後のますますの活躍が期待されます。

荒川 聡子
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