受賞者

平成24年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題「収差補正付き HRTEM 法による原子歪場の直接解析」

九州大学 工学研究院 材料工学部門 准教授
田中 將己

 田中將己氏の研究は、建造物や運輸機器、原子炉などに使用される構造材料の破壊起点であるミクロな亀裂先端の挙動を、高分解能電子顕微鏡を用いて原子尺度で解明しようとするものです。
 金属などの構造材料が外部から力を受けて変形し、限界に達すると原子結合が切断され亀裂が発生します。この亀裂の先端が進展する事によって破壊に至ります。破壊は必ずしも一気には進まず、亀裂先端近傍での応力緩和により一定の遅れを示します。この緩和の度合いが、材料の強度を大きく左右し、構造物の最終的な強度をも決めると言っても過言でありません。しかし、これほど重要な課題であるにもかかわらず亀裂先端における応力緩和機構は今日に至るまで完全には解明されておりません。亀裂先端の挙動に関わる領域は、その周囲を含めても原子尺度で測れる程度の広がりに留まるので、問題解決には原子尺度での構造情報が必要です。しかしながら、亀裂先端近傍の格子転位を媒介にした歪み場を、高分解能電子顕微鏡によって原子レベルで構造解析はこれまで困難でした。このことが問題解決を妨げる大きな要因でした。

 田中氏は、計算機との連携による電子顕微鏡の応用技術の向上により、これまで困難とされてきた格子転位を含む歪み場の高分解能電子顕微鏡による原子尺度の評価が可能になってきたことを踏まえて、亀裂先端の歪み場を原子尺度で実験的に解析して、材料物理学、材料強度学における長年の懸案である、亀裂先端における応力緩和機構を、これまで培われてきた弾性論との整合性をふくめ、解明する事を目指しており、その成果が大いに注目されます。


九州大学 大学工学研究院 材料工学部門 東田研究室(材料強度物性学) ホームページ

田中 將己
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