受賞者

令和5年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:時間解像度電子顕微鏡を用いたシナプス内多小胞体形成機構の解明

セントジュード小児研究病院 発達神経生物学部門 助教
井元 祐太

シナプスによる神経伝達活動により、シナプス小胞に古くなったり傷ついたりしたタンパク質が蓄積します。この異常(変性)タンパク質は、膜のリサイクル経路から効率的に除去されなければならず、これは膜成分とともにエンドサイトーシスによって回収され、さらに多小胞体(multivesicular bodies : MVBs)に誘導され、分解処理されます。この過程に問題があると神経変性障害を起こす原因になることがあります。従って、MVBs はシナプスにおける変性タンパク質処理構造として重要な役割を果たしており、MVBs の生成経路や分子機構の研究は、非常に重要な意味と意義を有しています。

井元祐太氏の研究は、この異常タンパク質が選別処理される MVBs の形成要素として、活動電位発火に応じたシナプス小胞リサイクル経路を駆動する分子の一つであると考えられていた Dynamin-3 (Dyn3) が関与する可能性を解明しようとする興味深い研究であります。これまでに、時間分解電子顕微鏡、超解像度、単分子イメージングを活用して、Neuron、Nat. Commun. 、PNAS などの評価の高い国際雑誌に筆頭著者として論文を発表しており、選考委員会ではこれらの研究業績が高く評価されました。さらに、井元氏は、Dyn3 が MVBs の膜変形を制御しているという仮説を立て、この新しい MVBs 生成経路の根底にある構成要素と分子メカニズムを明らかにすることで、MVBs の成熟に重要な Dyn3 依存性膜分断機構を明らかにしようとする意欲的な研究を計画しており、すでに実績を示している時間分解電子顕微鏡法も活用することで、研究のさらなる発展が期待されます。

よって、今後の研究の一層の発展を期待して、ここに風戸研究奨励賞を贈呈します。

井元祐太
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