受賞者

令和5年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:透過電子顕微鏡を用いた核形成分子過程の映像定量化解析

東京大学 総括プロジェクト機構 特任准教授
中室 貴幸

中室貴幸氏の研究は、連続撮影された一連の電子顕微鏡像の定量的解析を通し、複雑な分子の動態を調べることで、分子集合体の構造揺らぎと実時間成長現象を観察することを目指しています。具体的には、時間分解能と空間分解能を兼ね備えた透過電子顕微鏡を使って、これまで40ミリ秒範囲で行っていた観察をサブミリ秒での高速かつ高精細画像観察に向上させ、オングストローム単位の精度で単分子・単原子追跡を可能とし、個々の分子の集団(クラスター)が数十~数百個の粒子サイズに成長してバルクとして平衡状態に至る挙動を追求します。

中室氏は、カーボンナノチューブの内部空間を利用して、塩化ナトリウムの結晶化現象を精緻に解析する研究などを行ってきました。本課題ではこれまでの中室氏の研究をさらに発展させ、酸化アルミニウムの核形成やカーボンナノチューブ表面へのペプチドや糖鎖の化学修飾を利用したバイオミネラリゼーション研究への応用を見込んでいます。

中室氏の研究は、核形成分子過程の時間変化を捉えるだけでなく、単粒子構造揺らぎの頻度と多粒子の統計的結果を比較して両者が一致することを確認することも目指しています。

核形成分子過程を実時間で分子・原子レベルの映像として捉えることは、小学生から専門外の研究者への幅広いアピールでもあり、先端研究と科学教育を結びつける点でも重要です。

よって、今後の研究の一層の発展を期待して、ここに風戸研究奨励賞を贈呈します。

中室貴幸
ページトップへ