受賞者

平成29年度<風戸賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:「原子間力顕微鏡および電子顕微鏡によるアミロイド構成蛋白質凝集の観察」

昭和大学 医学部 主任教授・診療科長
小野 賢二郎

小野賢二郎氏は、認知症の病因と考えられるアミロイドβタンパク質(Aβ)とα-シヌクレインタンパク質(αS)の異常凝集に関する研究を電子顕微鏡と原子間力顕微鏡(AFM)を活用して行い、フェノール化合物によりこれらのタンパク質の凝集が抑制されることを示唆するダイナミックな形態変化を捉えることに成功しました。

細胞外にAβが異常凝集して神経細胞に障害を与えることが、アルツハイマー病の病因と考えられています。小野氏はAFMを駆使することにより、試験管内でフェノール化合物がAβ線維形成を抑制すると共に、既存の線維を不安定化させることを解明しました。また、Aβ線維には直線型とらせん型、および両方の型を併せ持つハイブリッド型があること、Aβオリゴマー形成は線維形成とは別の凝集経路をとること、などを示し、この病気の臨床および病理の多様性とAβの形態との関連を示唆する結果を発表しました。

さらに小野氏は、パーキンソン病やレビー小体型認知症を始めとするレビー小体病に関わるαSの機能解明にもAFM技術を応用しました。その結果、Aβと同様にフェノール化合物などがαS線維形成を抑制し、既存の線維を不安定化させること、αS凝集を抑えシナプス毒性も軽減させること、などを示しました。これらはαSの機能を理解するために重要な成果であり、αS線維やオリゴマー形成が関わる様々な疾患の病態解明や創薬に寄与する可能性があると考えられます。

小野氏は認知症の問題解明に向かって真摯に一貫して取り組み、積極的に他の研究者と協力して新技術を導入した応用研究を行ってきました。小野氏の発表論文の精細な顕微鏡写真や引用件数の多さに表れているように、研究成果は国内外で評価されつつあり、今後ますますの活躍が期待されます。


小野 賢二郎
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