受賞者

平成29年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:光-電子相関顕微鏡法を用いてのAPCの腸上皮での新規機能解析

藤田保健衛生大学 研究支援推進センター 講師
尾之内 高慶

尾之内高慶氏の研究は、癌抑制遺伝子Adenomatous polyposis coliがコードするAPCタンパク質を研究対象とし、光-電子相関顕微鏡法(CLEM)を用いて、APCタンパク質が小腸上皮細胞の細胞間接着構造形成において果たす役割を解明しようとするものです。

APCタンパク質はWntシグナル系を負に制御することによって細胞増殖を抑制しており、遺伝子変異によってβ-cateninと結合できない異常なAPCタンパク質が産生されるとWntシグナル系が亢進し、大腸癌の発生にいたることが知られています。その一方、APCタンパク質はC末端領域で微小管、PSD-95などと相互作用し、細胞の分化、移動、接着などに関与することが示唆されていますが、その詳細は明らかになっていません。

尾之内氏らはこれまでの研究により、正常なAPCタンパク質の代わりにC末端領域を欠如したAPCタンパク質を発現するマウスを解析することにより、小腸絨毛の長さの増加、小腸絨毛構成細胞の分布の異常などを見出し、APCタンパク質のC末端領域が小腸上皮の恒常性維持に寄与していることを明らかにしました。またさらに変異APCタンパク質を発現する小腸上皮では細胞間接着因子の発現が亢進していることも見出しています。

今回の研究では、パラフィン切片の同一部位を共焦点レーザー顕微鏡と走査型電子顕微鏡で観察するというCLEMの手法を用いて、細胞間接着構造やその構造形成に関わる因子、さらに正常および変異APCタンパク質の分布の詳細な観察が計画されています。これにより癌抑制以外のAPCタンパク質の新たな機能が明らかになることが期待されます。


藤田保健衛生大学 医学部 第一病理学

 尾之内 高慶
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