受賞者

平成30年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:DNAオリガミを用いた細胞骨格微小管のデザイン

アリゾナ州立大学 バイオデザイン研究所 博士研究員
井上 大介

井上大介氏の研究は、細胞の形態形成や染色体分離そして細胞内輸送など、細胞骨格である微小管が細胞内で担っている様々な役割と、微小管を構成する原繊維の本数の違いによるチューブのらせん構造との関係を明らかにしようとするものです。

微小管はチューブリンと呼ばれるタンパク質のヘテロダイマーが連なった原繊維が十数本束になってチューブ状構造を形成しています。原繊維の本数は概ね13本ですが、異なる種の生体組織や細胞では14本から16本の原繊維でできた微小管も存在し、一部の昆虫では原繊維の本数が40本になるものも見いだされています。これらの違いは微小管に結合するタンパク質との相互作用の違いや微小管自体の重合脱重合などの動態にも影響すると言われていますが、本数がこのように多岐にわたる理由と細胞内での役割の関係は未だ明らかではありません。

そこで井上氏は今回申請した研究で、DNAオリガミ技術を活用し、微小管の重合核となるチューブ状構造体を設計して作成することで原繊維の数を人為的に制御し、原繊維の本数が微小管の機械的物性、生化学的性質、微小管結合タンパク質との相互作用などへの影響を詳細に明らかにすることを目標としています。

これまでの研究では主に高速原子間力顕微鏡によるイメージング手法により質の高い成果を国際学術誌に発表していますが、今回の研究ではクライオ電子顕微鏡も活用して構造評価を行う計画を立てており、一層興味深い成果が期待できます。

井上 大介
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