受賞者

令和元年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:骨血管連関におけるPTH新規作用の解明

北海道大学 大学院 歯学研究院 助教
長谷川 智香

長谷川智香氏の研究は、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)が、骨芽細胞系細胞に対する骨形成作用に加え、骨特異的血管への直接作用を有する可能性、また、血管と骨芽細胞系細胞や血管周囲組織との骨血管連関に対して、どのような効果を示すのかを明らかにしようとするものです。

PTHは、その受容体を介して骨芽細胞系細胞における分化、増殖に作用します。長谷川氏は、PTHの間歇的投与により、前骨芽細胞の増殖に伴う破骨細胞数の増加、前骨芽細胞と破骨細胞のカップリングによる骨芽細胞分化・骨形成亢進が生じることを、主に電子顕微鏡を用いて解明してきました。また、骨組織における骨特異的血管に関する研究も精力的に展開し、骨組織では骨血管連関によって様々な細胞間コミュニケーションが生じる可能性を見出すとともに、骨血管連関にPTHが関与する可能性を示唆しつつあります。

これらの研究基盤を背景に、長谷川氏は、透過型電子顕微鏡やFIB-SEMを用いた三次元微細構造的観察を駆使して、PTHにより骨組織の細胞群や骨特異的血管に様々な細胞間コミュニケーションが生じる機能形態学的な実態をより精密に解明することを目標としています。従来から考えられてきた、「PTHによる骨形成亢進は破骨細胞と骨芽細胞系細胞とのカップリングに依存する」との学説に加えて、「PTHが、骨特異的血管に働きかけ、骨血管連関による骨形成亢進に作用する」可能性について、明確に解明しようとする意義深い研究と認めることが出来、一層深みのある研究成果が期待できます。

長谷川 智香
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