受賞者

令和2年度<風戸賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:電子顕微鏡法によるウイルス増殖機構の解明

京都大学 ウイルス・再生医学研究所 教授
野田 岳志

野田岳志氏の研究は、電子顕微鏡法を用いて、インフルエンザウイルスとエボラウイルスの核タンパク質とRNA複合体の配置や構造を解析し、ウイルスの増殖機構の解明を進めたものです。

インフルエンザウイルスに関しては、超薄切片観察や電子線トモグラフィー解析を行い、ウイルス粒子内の中心に1本、周りに7本のゲノムRNAが配列される構造を見出しました。さらにリバースジェネティクス法で作製した7本のRNA分節しか持たない変異ウイルスを増殖させたところ、宿主細胞のリボソームRNAを取り込んで、中心に1本、周りに7本の構造が形成されていることを解明しました。これらの結果より、8本のRNA分節が粒子内に取り込まれることが、ウイルスの増殖能維持に必須であることが明らかになりました。一方、エボラウイルスに関しては、クライオ電子線トモグラフィー法とサブトモグラムアベレージング法を用いて、精製したウイルス核タンパク質・RNAらせん複合体について9Å分解能の構造解析を行いました。さらに、単粒子解析法により3.6Å分解能での構造解析を行い、エボラウイルスがウイルス核タンパク質・RNAらせん複合体を形成する分子機構を解明しました。

野田氏は、様々な電子顕微鏡法を活用して、病原性 ウイルス の増殖に関わる研究を進め、重要な機構を解明してきました。さらに、近年その重要性が高まっているウイルス学の研究を精力的に進めています。このように、野田岳志氏の研究は、ウイルス増殖機構の解明に大きく寄与しており、医学・生物学的に重要な意義を持つものです。

よって、これらの成果に対して、ここに風戸賞を贈呈します。

野田 岳志
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