受賞者

令和2年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:高速分割型STEM検出器による超高感度原子結像法の開発と応用

東京大学 大学院 工学研究科総合研究機構 助教
関 岳人

関 岳人氏の研究は高速分割型STEM検出器を使って高速スキャンおよび低ドーズ条件でLi系蓄電池の正極材料、ゼオライトおよび有機金属構造体(MOF)の環状検出明視野(ABF)STEM像を得て、構造の可視化を試みるものです。

関氏は東京大学工学研究科でSTEM分割検出器の最適化に長年取り組んできました。博士課程では微分位相電子顕微鏡(に用いる分割検出器の結像理論と像信号の評価、およびSTEMのコントラスト伝達関数(CTF)についての精緻な研究を行い、積分型CTFによるABF像解釈を提案してきました。本研究では、同様の16分割さらには40分割の検出器を使ってABF-STEM像におけるCTFの最適化を行い、それを用いて軽元素の検出能力が高いABF法と分割検出器の高速度応答性を使って、これまでにない超高感度原子結像法の開発を目指すものです。

この電子顕微鏡法を確立した後は、Li系正極材料、ゼオライトおよび有機金属構造体を観察しその局所構造の解明をめざします。特にゼオライトについてはABF-STEM法を用いて世界で初めて酸素原子位置を同定し、従来の方法では決定できなかったシリコン酸素シリコンSi O Si 結合の結合角の決定を試みます。これらの試料はいずれも低ドーズ観察が必須とされるので、分割型検出器による高感度検出の特徴が十分発揮されると期待されます。

以上のように 、関氏の研究提案は高分解能STEM法における新規性に富んだ挑戦的なものであり、風戸研究奨励賞に推薦し研究支援をおこなうことが最適であると考えられます。

よって、今後の研究の一層の発展を期待して、ここに風戸研究奨励賞を贈呈します。

関 岳人
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