受賞者

令和4年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:SOI 技術をもちいた高速電子直接検出器の開発

名古屋大学 未来材料・システム研究所 助教
石田 高史

石田高史氏の研究はon-pixelメモリを搭載した高速かつ連続撮影可能なSilicon-On-Insulator (SOI) ピクセル電子検出器を開発することを目的としています。

ナノ秒からマイクロ秒でおこる非可逆的な構造変化を高分解能電子顕微鏡観察するためには、単電子を検出できるような高い感度をもつだけでなく、高速動作する高分解能の像検出器の開発が新たに必要です。このような検出器の高速化を妨げる一つの原因は読み出し速度による律速です。石田氏の研究は高感度SOI電子検出器の回路内にメモリとナノ秒動作スイッチを搭載することで、サブマイクロ秒以下の時間分解能を実現しようとするものです。

開発計画としては、同氏がこれまで研究してきたCMOSカメラ技術 (Microscopy, 2021) を基礎として、25μmピクセルサイズの素子にメモリと高速スイッチを追加することによって100nsecでも撮影が可能であることを実験的に示します。この時間分解能は既存のK3カメラなどの1/1000程度に達します。次に新検出器を収差補正TEMに搭載し、ダメージに敏感な有機結晶試料の高分解能観察をサブマイクロ秒間隔で行い装置の実用性を確認するとともに、開発した検出器が有機結晶のノックオンダメージの動的過程をナノレベルで明らかにできることを目指します。

カメラデバイス開発の他にも、高感度および高空間・時間分解能連続撮影を可能にするデータ収集システム(DAQ)の独自開発もすすめます。 ニッケルジメチルオキシム有機結晶を用いた連続観察実験の成果を日本顕微鏡学会や国際誌Ultramicroscopyなどにも発表して、既存のカメラとは異なった高感度高空間・時間分解能検出器の技術開発を欧米の電子顕微鏡コミュニティーにもアピールする予定です。

このようなハードウエア(ソフトも含む)の技術開発は、我が国の顕微鏡学の進展と国際評価を高めることに大きく貢献すると考えられます。

よって、今後の研究の一層の発展を期待して、ここに風戸研究奨励賞を贈呈します。


https://sirius.imass.nagoya-u.ac.jp/

https://sirius.imass.nagoya-u.ac.jp/research/

石田高史
ページトップへ