受賞者

令和5年度<風戸賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:超高速時間分解電子顕微鏡システムの構築による光誘起現象のダイナミクス研究

理化学研究所 創発物性科学研究センター 上級研究員
下志万 貴博

下志万貴博氏は、試料へのパルス光照射と同期したパルス電子照射によるポンププローブ法を可能とした超高速時間分解電子顕微鏡システムを構築し、TEM像、電子回折図形、STEM法などと組み合わせ、光誘起による超高速ダイナミクス現象のナノスケールでの観察によりユニークな研究成果を挙げています。

下志万氏の業績の一つは、格子欠陥を導入したキラル磁性体 Co9Zn9Mn2 に生成した磁気スキルミオンの光照射変形過程のダイナミクス観察です(Science Advances 2021)。この研究では、パルス光照射によりスキルミオン形状が変化し、100ns程度で六回対称性を有する格子を形成した後、10µsの時間スケールで初期の無秩序な状態に緩和することを見い出しました。これにより、磁気スキルミオンの整列及び消滅過程の確率論的ライフサイクルを明らかにしました。また、超高速時間分解電子顕微鏡を電子回折図形の時間変化観察に適用し、固体内の音響波の可視化とその生成・伝搬メカニズムの解明に成功しました(Nano Letters 2020)。この研究では、VTe2 へのパルス光照射により、通常の熱弾性では生成困難な剪断音響波の生成を観測し、新たな光音響効果を示唆しました。また最近では、4D-STEM法に時間分解法を導入することにより、光誘起に伴う格子歪の空間マッピングによる音響波ダイナミクスの定量的評価や、光加熱による磁化ベクトル変化の空間マッピングが可能である事を示しました(Review of Scientific Instruments 2023)。

下志万氏の研究は、電子顕微鏡を用いた光誘起現象のダイナミクス研究を推進した点で高く評価でき、風戸賞にふさわしい業績であると判断されます。よって、これらの成果に対してここに風戸賞を贈呈します。

下志万貴博
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